集団給食調理に携わる私たちは、安全な食事を提供するために自身の健康には特に気遣っています。
体調管理(感染症等にかかっていないか)はもちろん、自身の家族の体調(2次感染を防ぐ)にも気を使い、調理を行う「手」の傷にも注意を払っています。
今回はこの中から、調理員の「手」について書いていきたいと思います。
給食調理員の「あるべき手」とは?
安全・安心な給食を作るために最も大切なことは「手」の衛生です。
手洗い・消毒はもちろん行いますが、
- 爪は短く、ネイル、マニュキュア(透明含む)はつけない
- 指輪、時計等の装飾品はつけない
- 絆創膏もダメ
- 手指の傷もダメ
- 手荒れもダメ
という決まりがあります。
装飾品はつけない、ケガをしないことを守る必要があります。
給食調理員が手指をけがしてしまった場合はどうするのか
装飾品に関してはつけたり外したりが可能ですので、勤務時には装飾品は取り外すことで解決します。
しかし、ケガをしてしまった場合はそうもいきません。
給食調理の仕事はただでさえ、
- 包丁や缶切り、キッチンバサミなどの刃物を使用するため、切り傷のリスク
- お湯を沸かしたり、オーブンを使ったり、揚げ物をしたり…とやけどのリスク
- 手指を消毒することによる手荒れのリスク
- 食器洗浄による手荒れのリスク
が高い職場であります。自宅で気を付けていても職場内でけがをすることもあります。実際に何人ものけが人を見てきましたし、私自身もふとした時に切り傷を作ってしまうこともあります。
では、給食調理員がけがをしてしまった場合、どのように対処することが望ましいかを書いていきましょう。
ケガは適切に処置する
切り傷等ができてしまった場合、傷の程度に関係なく、適切な処置をすることが望まれます。
たとえ小さな切り傷であっても、その傷口からの菌が食品へ感染してしまい、そのまま提供することで「食中毒を引き起こしてしまう可能性」があるのです。
ケガの処理
【切り傷や擦り傷】
- 傷口を清潔なタオルやガーゼで当てて止血をします。
- 消毒液で消毒をして防水の絆創膏で保護します。
【やけど】
- 流水でしっかり冷やす。(シンクではなく、手洗い場で行いましょう。)
- 必要に応じて保冷材等で冷やすことも有効です。
食品用の手袋をつける
手指にけがをしてしまった場合は、手当後に絆創膏の上から「食品用の手袋」でしっかり覆うことで調理の仕事に戻ることができます。(保健所へ確認済み)
しかしその場合でも、サラダや果物など非加熱で提供する食材を触ることは避けたほうが無難です。できることなら、食品に触らなくてもできる作業を行ったほうがより良いでしょう。(実際の現場ではこれは不可能に近いです💦)
給食調理員の手にケガがあるとなぜいけないのか
ケガをした時にできる傷口は、「黄色ブドウ球菌」が繁殖しやすい環境となります。とくに化膿している場合は、通常よりも多くの黄色ブドウ球菌が存在しています。
黄色ブドウ球菌とは
人や動物の皮膚などに広く生息している常在菌です。健康な人の2~3割は保菌しており、菌のついた手で調理したものを摂取することで「食中毒」を引き起こすことがあります。
発症した時の症状は、激しい吐き気・腹痛・嘔吐・下痢などです。
潜伏時間は30~6時間と比較的即時型であり、発症した場合、原因特定がしやすいのが特徴となっています。
しかし、治癒も約1日と早いことが特徴ですので、症状が軽い場合は「食中毒」と気が付かないケースもあります。
そもそも事故のないように勤める
手のケガは勤務中以外でもできてしまうことはありますが、勤務中に「手を切った」「やけどした」などとならないように、日ごろからの勤務の在り方も考えたほうが良い場合もあります。
時間に追われる仕事でもあるために、焦ることもあるかもしれませんが、調理場内では「走らない」「焦らない」「慌てない」「お互い声掛けをする」などを意識的に行うことができるとヒヤリハットの事故も回避できる環境となります。
刃物や熱い物が多い職場です。周りの職員のためにも、危険につながる行動はしないように心がけましょう。
さいごに
私たち集団給食を作る職員は、「手」を大切にしなければなりません。
特に冬場は手荒れがひどくなりがちですので、帰宅後の手のケアは必須となります。
結構高めのハンドクリームを買ったりもします💦
ケガや傷によっては「出勤停止」にもなりかねないため、日ごろから細心の注意が必要となるのです。