3月は、新入園児の面談やオリエンテーションが増える時期です。
普段の生活に関する聞き取りや、成長具合の聞き取りはもちろん、食事の進み具合や、食物アレルギーの有無の聞き取りも行われます。
近年、食物アレルギーを持つお子さんが増えつつあります。
卵や乳など、成長とともに耐性がつき、2~3歳を過ぎるころには食べることができるようになる食物アレルギーもあります。また、ナッツやそばのように深刻な症状が出てしまうアレルギーもあります。
以前、記事にもしましたが、食物アレルギーに対応した給食を作るには、専用の設備や、専門調理員が必要になります。
きちんとアレルギー食に対応しようと思うと、子どもを危険にさらさないためにも、それなりの設備や知識が必要になりますし、 ただでさえ人員が少ない保育園給食職員では対応しきれないこともあるのです。
3歳未満児に特に多い食物アレルギーは卵と乳
3歳未満児…保育園では乳児と呼ばれる年齢の子です。0歳から3歳までの子は園に初めて預けられる子が多い年齢です。そして、食物アレルギーが一番多い年齢でもあります。
学年1人、卵と乳のいずれかのアレルギーを持つ子がいる場合もあります。
先にも書きましたが、2歳過ぎくらいになりますと卵・乳のアレルギーに関しては改善する傾向にあります。多くは幼児クラスに進級する前にはみんなと同じ給食を普通に食べることができるようになります。(医師の診断は必要です)
アレルギー児の保護者は「アレルギー対応食」を希望します
アレルギーを持つお子さんが入園する際、アレルギーの程度を聞き取りします。
アレルギーの程度によっては、保育園での給食提供ができない可能性もあるからです。
給食提供ができない日は、お弁当を持参して登園してもらうことになるのです。
保育園で給食を提供できるアレルギーの程度
- 卵では、加工品に入っているつなぎを食べることができる程度→割卵する日のみ弁当
- 乳では、牛乳そのものをコップ1杯飲むことはできないが、料理やおやつに入っているくらいならば食べることができる場合は給食提供→牛乳のみでは提供しない
- 小麦アレルギーに関しては、きちんとした給食設備がある園以外では基本的にお弁当を持参してもらいます。
- ナッツ、そばなどは保育園給食で使用することはほぼないのですが、もし使用する園であれば、お弁当持参の登園になるかもしれません。
どうして保育園でアレルギー食を作らないのか?
大きく分けて2つの理由があります。
- 人員がいない
- アレルギー専用の給食設備がない
人員がいない
保育園の規模にもよりますが、多くの園では調理員は1~3名で稼働しています。アレルギー児の給食を作ることになりますと、このうちの1人は完全に別室での作業になります。アレルギー児の食事は普通食事と同じ空間で作ることができないためです。
同室で行ってしまうことでアレルゲンの混入の恐れがあり、アレルギー児へ安全な給食の提供ができなくなります。
そして、毎年いるとは限らないアレルギー児のために1人分の人件費を無駄にかける保育園はまずないと思います。
専用の給食設備がない
- 専用の調理場
- シンク
- 食器
- 調理器具
など、アレルギー児専用の設備を持つ園もあまりないでしょう。
場所も必要ですし、設備投資にかかるお金も半端ではありません。
ですが、これらをきちんと用意しないと、アレルギー児に対して「安全で安心な給食」の提供は約束されません。
給食を提供してほしい気持ちはわかるけれど…
自分の子が入園の際に「毎日お弁当を持参してくださいね。」と言われてしまったら、
- 大変
- 面倒くさい
- 保育園でアレルギー食を作ってくれればよいのに…
と思われる方が多いと思います。私がその立場になったとしても、そう思うと思います。でもちょっと待ってください!!
先の2つの理由もあって、集団給食を作っている場で、その子一人のためにアレルギー食を作ったとしても、必ずしも安全な給食が提供できるとは限らないのです。
安全なアレルギー食を提供できる施設は本当に限られているのです。
ですので、保護者がいくらアレルギー食を希望されても、「安全が保障」されない限り、お弁当対応での提案をさせていただくことになります。
アレルギー対応している保育園は「補助金」が下りている
いやらしいかもしれませんが、お金の絡みもあります。
設備費や割高なアレルゲン除去食品の購入に充てるためだと思いますが、アレルギー食を提供している園では、補助金が下りているようです。
(勤務先の園はアレルギー食を作っていないので、補助金はもらっていません。)
ですので、アレルギー食を作っていない園では「お弁当対応」をお勧めされます。これは、アレルギーに対応することが面倒くさいとか大変であるとかではなく、アレルギー食を作るにあたっての補助金をもらっていないので、この対応で正解なのです。
反対にアレルギー食に対応してくれる園では、補助金を頂いているはずですので、細かな対応をしてもらえると思います。設備もしっかりしているはずですので、安全安心な給食を準備してもらえます。
さいごに
乳幼児を預かる保育園での給食提供は、「命を預かる仕事」であると思っています。特に乳児の食物アレルギーは、特に慎重にならなければならない案件なのです。
「このくらいなら…」「まあいっか」は決して許されることではありません。
危険な要因が少しでもあるのであれば、「やらない」「受けない」とする選択肢もしなければならないこともあります。
近年増えつつある食物アレルギー。
保護者からすると「アレルギー児の我が子」であっても、保育園側からすると「何人かのアレルギー児のうちの一人」であり、あくまでも一人だけ特別という感覚ではありません。複数のうちの一人です。
そして現実問題、少ない調理員でここに対応したアレルギー食の用意はできません💦
できたとしても、専用設備がない限り、アレルゲンのうっかり混入の危険は高い状態です。
必ず「安心安全な給食」の提供ができない限りは、アレルギー対応の給食を作ることは控えたいことが本音なのです。
(ですが、極力アレルゲンを控えた献立を立てることで、卵や乳のアレルギーを持つ子でも安心して食べることができる給食の提供は可能になります。)