これから冬に向けて気を付けなければならないこと…それは感染症です。
たくさんの子どもの食事を作る者として徹底している決まりごとがあるのです。
今回は、調理員自身の衛生管理と調理室内の衛生管理についてのお話です。
目次
給食室の出入りについて
調理室内は非汚染区域と呼ばれ、神聖な(?)場所なのです。ここに立ち入れるのは以下の項目を満たした調理員、業者などです。
- 保菌検査済み(いわゆる検便です)であること
- 専用の白衣、帽子、マスクを身につけていること
調理前の衛生管理
健康管理
- 年に1度の健康診断を受ける。
- 月1回の保菌検査を行う(赤痢・サルモネラ・O-157など)
- 毎日の作業前に各個人ごとの健康チェックを行う。(書類は記録として残す)
- 自身の食中毒に気を付けた生活をおくる。(二枚貝の喫食は細心の注意を)
- 作業するにあたり、手の傷や化膿がある場合には、必ず手袋をつけた状態で調理する。
- 調理員本人、または家族の中で嘔吐下痢の症状や、食中毒と診断されたものがいる場合には調理禁止。(事務作業は可)
調理員の服装
- 装飾品は禁止(指輪・時計など)
- コンタクト使用者は外れないように気を付ける
- マニュキュア、香水は禁止
- 清潔な白衣、帽子を着用し、髪の毛は出ないようにする
- マスクは鼻まで着用する
- 下処理用と調理用の前掛けを個別で用意する
- 調理場内では専用の靴を履く
- お手洗いに行く際には、白衣・帽子・マスク・靴はすべて外す
手洗い
以下の時には必ず手洗いを行います。何だか手ばかり洗っている印象です。
- 作業開始前
- お手洗い後
- ごみ処理後
- 食材の検収(受け入れ)や保管をした後
- 魚・肉・卵・野菜・段ボールなどに触れた時
- 食品に直接触れる前
- 盛り付け時
- 作業の切り替え時
入念な手洗い後、水けを取りアルコールで消毒します。
次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤等で使用されています)の方が大腸菌に対しての効果が高いと言われていますが、欠点として手荒れします。手荒れした結果、化膿してそこから黄色ブドウ球菌による食中毒を引き起こすリスクもあるのです。ですので、人体にはアルコール消毒のほうが良いそうです。(保健所に確認済み)
原材料の管理
- 納品書を必ず確認し、その品物を受け入れた日時・担当者名・賞味期限・品温(要冷蔵・冷凍)受け入れ時の室内の温度、湿度・品物に異常がないかを必ず記載し、書面として取っておく
- 生鮮食品は当日納品
- 食品は床に直置きしない
- 検収作業後は速やかに決められた場所に保管する
原材料の保管方法
- 肉、魚、野菜は食材の分類ごとに蓋つきの専用容器に入れて冷蔵庫で保管する。
- 段ボールは調理室内に持ち込まない
- 冷蔵庫は10度以下、冷凍庫は-15度以下
- 賞味期限内に使用する
- 冷蔵庫内の清掃を怠らない
検食の保存
給食施設では、原材料と調理済み食品を常に50gずつ保存しています。
- 各材料ごとに50gずつ清潔な袋に密封して入れ、-20度以下で2週間保存する。
- 採取するときには、使い捨手袋か消毒されたスプーンなどを使用する。
- 原材料の保存の場合は、洗浄消毒を行う前に保存を採取する
- 原材料は日付ごとに一袋にまとめ、日付をわかるように記載する
- 調理済み食品については、配膳後の状態で50g採取する
- 離乳食やアレルギー食も同様に採取する
- 市販のお菓子も保存する
器具・容器等の衛生管理
調理器具
包丁・はさみ・まな板など
- 水またはぬるま湯で洗剤を用いて洗浄する
- 洗い流す
- 包丁の継ぎ目などは念入りに洗浄する
- 水を切り、殺菌保管庫に入れる
- 作業前には次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
調理器具等
- 水またはぬるま湯で洗剤を用いて洗浄する
- 洗い流す
- ホイッパーなどの継ぎ目は念入りに洗浄する
- 洗浄後、熱風食器消毒保管庫で消毒をする(85℃以上30分以上)
- 塩素酸ナトリウムで消毒する
中心温度計
- センサー部分は、水またはぬるま湯で洗剤を用いて洗浄する
- 洗い流す
- 洗浄後、作業前には次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
食器
- 残菜を取り除き、水またはぬるま湯で洗剤を用いて洗浄する
- 洗い流す
- 洗浄後、熱風食器消毒保管庫で消毒をする(85℃以上30分以上)
- 定期的に漂白を行う
調理台・シンク
- 周辺を片付ける
- 水またはぬるま湯で洗剤を用いて洗浄する
- 洗い流し、乾かす
- 次亜塩素酸ナトリウムを噴霧する
調理場内の衛生管理
- 調理室内は湿度80%以下、温度は25度以下を保つ
- 調理作業以外の不要なものを置かない
- 床はなるべく乾いた状態であることが望ましい
- 生ごみは速やかに処分する
- ねずみ、害虫が侵入しないように工夫する
- 清掃は、食品が全て搬出されてから行う
- 調理員専用トイレの清掃・殺菌も行う
- 手洗いに必要な石鹸、アルコール、ペーパータオルは常に使用できるように補充しておく。爪ブラシは洗浄、消毒も行う
最後に
給食を作る仕事は「ただ料理をするだけ」ではありません。一歩間違えてしまうと、多くの人が食中毒に…ということもあり得るのです。
多くの決まりがありますが、私たちはこれらの決まりを守ることで安全な給食提供を行うことができます。
実は今回書いたことはまだまだ一部にしか過ぎません。
それどころか、東京五輪に向け、飲食店を中心に厳しい指導が入っている影響からか給食業界でも年々決まりが増えているのです。
多くの決まりがあるように見えますが、慣れてしまうと当たり前のことになるので、苦痛ではありません。お金をもらって仕事をしている以上、しっかりと務めを果たしたいと思います。