近年、アレルギーを抱える子が増えてきたように感じます。ですが、乳児で発症したアレルギーは予後が良く、多くが3歳くらいまでに軽減あるいは消失してしまいます。
ですが、保育所に通うお子さんをお持ちの方にとっては、「今」を何とかしたいところ。そういった場合には、除去食療法行う場合が多いです。もちろん主治医の判断が必要になります。
今回は小児食物アレルギーの除去食にまつわる知識を書きたいと思います。
目次
小児の食物アレルギーの除去食療法を行うにあたって
食物アレルゲンの性質を理解したうえで、必要最小限の除去を心がけます。
必要最小限の除去とは?
- 念のため… 心配だから…と言って必要以上に除去しない。
原因食物でも、症状が誘発されない食べられる範囲までは食べることができる。
- 食べられる範囲を超えない量までは除去をする必要がなく、積極的に食べることができる。
こんな食物アレルギーがあります!
鶏卵アレルギー
一番メジャーな食物アレルギーですね。
卵の中でも、卵白にアレルゲンが含まれています。卵黄にはほとんど含まれませんが、卵白と、完全に分けることが不可能なため、卵黄も除去の対象になることが多いです。
加熱によって、卵のアレルゲン性は低下します。
生卵は症状が出てしまうのに、加熱したものは平気といった例がそうですね。
よくある勘違いですが、鶏卵がダメ→魚卵もダメ ではありません。むしろアレルゲンが異なりますので、魚卵にアレルギーがなければ平気なはずです。
お菓子などに含まれている、卵殻カルシウムも食べても平気です。
ただし、ウズラ卵は鶏卵と交差抗原性があるため、除去が必要です。
交差抗原性とは
異なる食物でも、原因たんぱく質の構造が似ている場合、原因食物以外でも症状が出ることを言います。
牛乳アレルギー
主なアレルゲン成分は、ガゼイン・βラクトグロブリンです。加熱・発酵によってアレルゲンが減少することはありません。
乳児に多いアレルギーですが、比較的早期に軽減しますが、接触、湯気の吸入によって呼吸器症状や咽頭症状がおこりやすいアレルギーでもあります。
牛肉とはアレルゲンが異なります。
牛乳アレルギーの子は、カルシウムが不足しやすくなります。アレルギー用のミルクを飲むことが勧められます。
牛乳アレルギーに配慮すべきもの
ホエー(ヨーグルトの上澄みなど)、ラクトグロブリン、カゼイン、乳糖、乳酸菌などの表示がある場合には牛乳アレルギーの子には与えないようにします。
また、ヨーグルト・カルピス・乳酸菌飲料・乳糖・脱脂粉乳はNGとなります。
アレルギー用のミルクの使い方
- 牛乳の代わりに飲む
- 離乳食などに取り入れる
小麦アレルギー
高熱で焼かれても、アレルゲン性は低下しません。
米・ひえ・あわ・きび・たかきびには交差抗原性はありません。
大麦・ライ麦には交差抗原性があるため、除去が必要になります。
しょうゆやみそなどの超医療に含まれる小麦や、麦茶は問題ないことは多いです。
麩・グルテンは小麦が原料なので、与えないようにします。
大豆アレルギー
大豆油は除去の必要がないです。
みそやしょうゆはアレルゲンの大部分が分解されており、摂取可能なことが多いです。
豆腐が食べられる人でも、納豆や豆乳でアレルギー症状が出ることもあります。
他の豆類の除去が必要になることは少ないです。
魚アレルギー
多種の魚に共通の反応をすることが多いですが、青魚が特に多いというわけでもありません。
ツナ缶は、高圧高温処理によってたんぱく質が分解されているので食べることができる場合が多いです。また、かつおだし・煮干しだしは食べられることが多いです。
甲殻類や貝類とはアレルゲンが異なります。
甲殻類、軟体類、貝アレルギー
えびやかに、イカやタコ、貝類にはそれぞれ交差抗原性があります。
肉アレルギー
患者数は非常に少ないです。すべての肉の除去を必要とする例はほとんどないのです。肉そのものはアレルギーであっても、エキスは大丈夫なことが多いです。
野菜・果物・芋アレルギー
特定のものに強いアレルギー反応を引き起こす場合には、厳密に除去を必要とします。
口やのどの症状だけの場合には、加熱することで食べることができる場合が多いです。
花粉症との因果関係も多少なりあります。
ナッツ類(ピーナッツ・カシューナッツ・クルミ・ピスタチオなど)
アナフィラキシーショックを起こす危険が高いアレルギーです。これらは、ローストすることでアレルゲンを増します。
ごまアレルギー
粒より、すりごまや練りごまで症状が出やすいです。
そばアレルギー
症状が出た時には、重篤化することの多いアレルギーです。
アレルギー物質紛らわしいもの
名称が紛らわしいですが、アレルギー物質ではないものです。
乳酸カルシウム、乳酸ナリウム・・・乳という文字がはいりますが、化学物質です。
増粘多糖類
アレルゲンが含まれる食材はたくさん存在します。ですが、思い込みによる除去は危険です。必ず医療機関に受診をし、主治医に相談のうえ、除去食療法を進めていってください。
離乳食は普通にスタートしてください
「親がアレルギー体質だから」「我が子はアレルギーかもしれないから慎重に…」と思い込んで離乳賞のスタートを遅らせることは、乳児にとってあごの発達や咀嚼の発達を遅らせることになりかねません。
栄養バランスに気を付けながら、食物アレルギーの原因となっている食材を避けながら夕食を進めていくことは十分に可能なのです。