衛生第一の給食室。毎日消毒薬や消毒機材を使用するのですが、どのようなものを使用しているのかをご存知ですか?
今回は、私たちが日々使用している消毒薬や機材にスポットを当ててみます。
アルコール
手洗いをした後に、必ずアルコール消毒をします。
アルコールは、黄色ブドウ球菌・腸管出血性大腸菌・一般細菌・結核・B型肝炎ウィルスにも有効です。
希釈なしで使用できます。
黄色ブドウ球菌
人の皮膚や消化管に常在する菌です。
特に調理時、手に怪我をしていたり傷がある場合は、そこから繁殖し食品に大量に混入して食中毒を引き起こします。
なので、調理員はこまめに 手をアルコール消毒します。
調理員は手が命です(笑)
私たちは、手に傷があると調理ができなくなります。ですが、水仕事で手荒れはするし、包丁で切ったりやけどをしてしまうこともある、ケガをしやすい環境で働いています。もちろん細心の注意を払って、ケガのないように、手が荒れないようにケアをしながら働いているのですが、どうしてもケガをしてしまうこともあります。
その場合には、必ずゴム手袋を着用・こまめに取り換えながらの作業になることもあります。ただしこの場合にも、加熱前の食材しか触れることができません。
腸管出血性大腸菌
強い毒のベロ毒素を産生する大腸菌です。
主に食品からの感染が多く、汚染された食肉・加工品・飲料水を飲食することで発症します。
かつて世間をにぎわせたO-157もこの腸管出血性大腸菌です。
アルコールの意外な用途
アルコールは、窓を拭くときに重宝します。調理場の窓は油汚れも気になります。
アルコールで拭くとそんな油汚れも簡単にきれいになるのです。
私は常にアルコールを使用しての窓ふきをおこないます。
(汚れも落ちるし、消毒にもなって一石二鳥です!!)
次亜塩素酸ナトリウム
わかりやすく言えば、ハイターやブリーチのようにツンとした刺激臭のある商品です。多くのものには「まぜるな危険」と書かれ、強い殺菌効果があります。
私の職場では、ピューラックスという商品を使用しています。
(実は自宅でも使用しています)
チフス菌・大腸菌・黄色ブドウ球菌・サルモネラ菌などに有効です。
野菜の消毒、食器類の除菌漂白、まな板の除菌漂白、布巾の除菌漂白、シンク・作業台等の除菌漂白などに使用しています。
次亜塩素酸ナトリウムは商品にもよりますが、多くは希釈しての使用となります。
次亜塩素酸ナトリウムは、皮脂を溶かしますので、手指の消毒には不向きです。
チフス菌
サルモネラ菌の1種。
人の糞便から汚染された食品や水などを飲食することによって感染します。
保菌者からの接触感染であるため、調理員から食品を介しての感染であることが多くなります。
サルモネラ菌
鶏卵からの感染が有名ですが、人やペットからの感染もあります。
少し前、ペットの亀から感染してしまった知人がいました。
次亜塩素酸ナトリウムの希釈濃度(塩素濃度5%=50000ppmの商品の場合)
食器類・野菜類の除菌消毒 100ppm(水2Lに対し4mL )
布巾の除菌漂白 600ppm(水2Lに対し約25mL)
シンクや作業台など 600ppm(水2Lに対し約25mL)
食器や、野菜類は希釈液に10分以上つけたあと、流水で10分以上洗い流します。
今話題の次亜塩素酸水とは?
次亜塩素酸ナトリウムと非常に名前が似ている、次亜塩素酸水。
しかし、両者は全くの別物です。
次亜塩素酸水とは、塩酸や塩化ナトリウムを電気分解して作られるものです。
- 無色透明
- 手指の消毒にも使うことができる(手が汚れていてはだめです)
- 専用の装置があれば作ることもできる
- 多くの菌やウイルスに効果がある
とされているものです。大きな違いはにおいがあるかないかでしょうか。
しかし私たちの職場では、次亜塩素酸水は使っていません。
大きな理由は、調理室という環境で、「水以外の」無色透明な液体があることが危険(誤飲や混入)だからです。間違って食べるものの中に入ってしまったら…気が付くすべはないと思います。
ですので、手指の消毒はアルコールで、
調理器具や調理台などはすべて次亜塩素酸ナトリウムで行っています。
殺菌保管庫
高温の熱風で食器や調理器具を乾燥させながら殺菌消毒する機械です。
稼働時間の設定や温度の設定もできます。
一度に多くの食器や調理器具が入るため、大量調理の現場では重宝しています。
殺菌保管庫(紫外線)
まな板や、包丁を保管する小型の殺菌保管庫です。最低でも1日1時間以上紫外線殺菌します。
簡単な乾燥機能もついています。
さいごに
調理室内に入るもの全てにおいて消毒や殺菌をします。多くの人の口に入る食事を作るうえで、最も気を付けるべきことは『食中毒』です。その食中毒を未然に防ぐためには、日々の防衛策が必要になります。その防衛策のうちのひとつが今回の消毒や殺菌のお話なのです。
そして、私たち調理員は手荒れやけがに気を付け、体調管理の怠らないようにしなくてはいけません。自身が胃腸炎の時や手に怪我があるときは調理場に入ることができなくなりますので、職場にも迷惑が掛かってしまいますし、自身の給料にも響いてくるのです(時給ですので…(´;ω;`))
そんなことのないように、日々気を付けながら、給食調理をしています。