(2021年5月に加筆しました。)
保育園給食を提供するにあたって、食物アレルギーは避けて通れない問題です。
アレルギー児が入園した場合、どこまで対応するのかは園によって分かれるところでもあります。
食物アレルギーで最も多いものは卵、牛乳です。(食物アレルギーの8割)
集団給食においてこの2つに対しては、アレルギーに配慮されている場合が多いです。
大豆や小麦など重篤な症状が出やすいがアレルギー割合が比較的少ないアレルゲンに対しては、集団給食では除去しきれない部分もあり、なかなか給食の対応が難しくなります。この場合は園と相談になります。
除去食での対応
この方法を取っている園は少なくはありませんが、きっちりとした正しい対応をしている園は実は少ないと思います。
そして、上記の設備が兼ね備えられている施設においても、個人個人のアレルギー段階に配慮するところまではなかなか難しいです。
- 生卵NGそれ以外はOKなど調理法に制限がある場合
- 卵20gまでOKなどの摂取可能なグラム制限がある場合
上記の制限があるアレルギー児の食事を作ることはほぼ不可能です。
ほぼ不可能と言ったのは、「作ること自体は不可能ではない」という意味を込めてです。園内で卵アレルギーの子は一人とは限りません。アレルギー児が複数いる場合、一人ひとり段階に応じての対応をしていたら鍋の数がいくつあっても足りませんし、人員もひとりでは無理です。それでも調理すること自体は不可能ではありません。
ただし、この場合は安全な給食提供ができなくなるリスクはぐんと上がってしまいます。
あれもこれもと何通りものアレルギー食を作っていると、
- 途中で食事が入れ替わってしまうこと
- アレルゲンの誤混入
- 配膳ミス(保育室側でも起こります)
など、起こってはいけないミスが起こってしまいます。また、非常に起きやすい環境となります。これはどんなに注意していても、人の手で作業を行っている以上、無いとは限らないことなのです。
ですのでアレルギーの食材が医師の指導の下、問題なく食べられるようになるまでは「量や調理法に関わらずに」完全にアレルギー食材の除去食になってしまうのです。
卵・牛乳など不使用の給食を出す園
こちらのスタイルをとっている園は少し珍しいタイプだと思いますが、コンセプトは
「みんなで同じ食事を食べられるように配慮した給食づくり」
ということです。
献立から卵・牛乳を完全に排除し、豆乳や調味料などを駆使した献立となっています。
食物アレルギーで最も多い卵と牛乳に配慮することによって、みんなと同じ給食を食べられるようになる子が多くなります。
ですが、反対にアレルギーのない子にとっては、卵と牛乳の摂取機会が損なわれることになります。この場合は、自宅で卵・牛乳を意識して摂るようにできると良いですね。
アレルギーに対応しない
現代においてこの対応は、少数の園だと思いますが、全くないわけでもないので一応記載します。
食物アレルギーは一歩間違えると命にもかかわることです。
保育園にも職員の人数の関係、認可園か無認可園か、様々な事情があります。
ですが何かあった時は、当然園の責任問題になります。
それを避けるために、あえてアレルギー対応をしない園もあります。
この場合は、アレルギー児は入園できないかお弁当持参での登園になる可能性があります。
アレルギーに対応した給食は作らない園であっても、昼食時に他の園児と離してお弁当の中にアレルゲンが混入しないように配慮はされますので安心してください、
厚生労働省のガイドラインから
「(アレルゲンの)食物除去は完全除去を基本とする」と明記されています。
なので、いくら保護者が
「○○gまでなら食べられます」
「加熱したら大丈夫です」
と言っても、保育園ではそこまでの対応はしないことが普通です。
ですが、
- 献立を作るときに除去を意識した献立作成
- アレルギーを新規で誘発させるリスクのある食材を使わない(例そば・ナッツ)
- 保育所で「初めて食べる」を避ける
- アレルギー食の単純化
- 加工食品の原材料の確認
- 調理室でアレルゲンの混入のない調理と搬送
- 保育所職員による誤植予防の体制作り
- 食材を使用するイベントの管理
- 保護者との連携
- 除去解除するときの注意
こういった工夫、注意はしなければなりません。
保育園では、就学前の幼い子が通っていることもあって、アレルギーに関して最大限に注意をする必要があるのです。
保育園入園までに保護者にしてもらいたいこと
特に2歳くらいまでに新規の食物アレルギーが発症することもあるので、保育園で初めての食材を食べるということは避けたいです。
入園の日までに、多くの食材にチャレンジしてもらい、お子さんの様子が食事の後に少しでも「おかしいな?」と感じた場合は、
- いつ
- 何を
- どのくらい摂取したのか
がわかるようにメモを取り、医師の診断を受けてもらうところまでしていただきたいです。
園には独自で用意されている、食材確認表というものもあり、給食で使用する食材をお家で食べたことがあるかを確認できるようになっています。
保育園で使用するであろう食材がある程度口にできていない場合には、給食の提供が難しくなってしまいます。しばらくお弁当持参で…ということにもなるかもしれませんのでぜひ家庭にいる間にお子さんの食経験をを進めていくことをお勧めします。
さいごに
今回は意外と知られていない保育園でのアレルギー児給食の対応について、現役保育園給食職員であるおやっさんが記事を書かせてもらいました。
子どもの食物アレルギーは、年齢とともに改善されるものが多く、代表されるところで乳と卵があります。
とは言っても、まだまだ体の弱い幼子のアレルギーですので集団生活での食事時には配慮が必要となります。
保護者の立場からは、
- 保育園で給食を食べれくれたほうが楽
- 弁当作りは面倒くさい
- 給食職員は「プロ」なんだから、できて当たり前でしょ!!
と思われることと思います。
気持ちはわかりますし、私も正直毎日の弁当作りは面倒くさいと感じます。
しかし、給食職員も全員がプロというわけではありません💦
中には無資格のパートさんもいますし、栄養士さんでも経験の浅い、新卒さんもいます。 ひとりでもそういった人がいる中で「完璧に安全なアレルギー給食提供ができる確率」と言ったら…ちょっと心配になりませんか?(私が言うのも変ですが💦)
この記事を読んでもらってどのよう感じるかは個人差があるでしょう。
しかし、少しでも「安全なアレルギー食の提供って難しいな…」と感じてもらえれば幸いです。